U&I
ニコルソン・ベイカー 著
有好宏文 訳
金子ちひろ 編集
2018年、白水社
『中二階』、『室温』、『もしもし』など、独特の緻密でマニアックな作風で知られる著者が、大作家ジョン・アップダイクへの思いを語った自伝的エッセイ/ノンフィクション。
1989年夏、かつて教わった作家ドナルド・バーセルミの訃報に接し、落ち込んだ著者は『ニューヨーカー』誌に追悼文を送ろうとする。だがアップダイクがナボコフのために書いた追悼文よりもいいものを書こうとして挫折。敬愛するアップダイクが亡くなったときに同じことになっては立ち直れないと思い、彼についてのエッセイを書くことを思いつく。存命で人気のある大御所について書くことに怖気づきながら『アトランティック』誌に提案すると、編集者が乗り気になる。
そもそも著者が文学の道を歩むことになったのは、19歳のとき母親が新聞に載ったアップダイクのエッセイを読んで大笑いするのを見たのがきっかけだった。アップダイクの著作の半分も読んでいないにもかかわらず、それを開き直るかのように「記憶批評」、「読まず語り」など自ら編み出した技法を駆使しながら、アップダイクに対する矛盾に満ちた感情を研究し、緻密なまでに描写する。「読者」と「書物」の奇妙で切実な関係を浮き彫りにする一冊。
(出版社紹介文)
Reviews
読者が一冊の本をただ単に読んだというだけではなく、文字通り生きてしまうこと、そして一人の作家とともに生きてしまうこと、そのようなことは可能だろうか。(・・・)そういう稀なケースを描き出しているのが、アメリカの現代作家ニコルソン・ベイカーの奇書『U&I』である。(・・・)わたしにとって、『U&I』はいつまでも読んでいたい本である。
若島正(京都大教授・米文学)
毎日新聞
2018年10月28日掲載の書評より
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『中二階』や『もしもし』で、ささいな出来事を冗舌に語って時を止める技量で知られる著者は、繊細で知的な批評眼の持ち主。(・・・)「U」と「I」の読者としては、若島正編訳のエッセー傑作選『アップダイクと私』(13年)に続いて、30年を経た原書の邦訳がかなってうれしい。
尾崎真理子(読売新聞社編集委員)
読売新聞
2018年10月28日掲載の書評より
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『U&I』は、傑作『中二階』と並んで、ニコルソン・ベイカーのベストと呼ぶべき怪作である。ジョン・アップダイクに対する異常な愛情が欠かせた本だという以外に言いようがなく、とにかく読んでみることをおすすめするしかない。
若島正(京都大教授・米文学)
毎日新聞「2018年この3冊」
2018年12月16日より
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本当にマニアックな作家ならではの内容。白水社はこのような作品をしっかり世に出してくれて嬉しい。
佐渡島庸平(コルク代表・編集者)
ダ・ヴィンチ
2019年1月号
小難しい評論ではない。むしろアップダイクを未読の方でも楽しめる一冊だ。タイトルから分かるように、あくまでもアップダイクのことが好きすぎる自分のことを語っているのだから。(・・・)『中二階』同様、思考の脱線や膨張も抱腹絶倒ものである。
瀧井朝世(ライター)
クロワッサン
2018年11月25日号
読者の想定のひとつもふたつも先をいく小説によって、日本にもファンが多い作家ニコルソン・ベイカーの「U&I」は、批評と私小説を合体させた驚くべき著作となっている。
豊﨑由美(書評家)
北日本新聞
2018年11月25日
自由の国アメリカは、ときにとんでもなく自由な作家を生む。(・・・)アメリカが生んだユニークな作家による、ユニークな大作家へ向けた、ユニークなエッセイ。
SOHEI OSHIRO, KO UEOKA
Them Magazine
2018年12月号
ベイカーはアップダイクの著作を読破しようとか、精読しなおして評しようとはしない。(・・・)いっそ痛快で、『読んでいない本について堂々と語る方法』の著者ピエール・バイヤールもびっくりである。(・・・)不読をめぐる、読むことの著。
鴻巣友季子(翻訳家)
週刊新潮
2018年12月27日号
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アップダイクの人となりを評することをきっかけに、ベイカーが描こうとしているのは、実は「I」のほうです。この「U」と「I」の配分の妙、そこから生じる妄想、あふれだす自虐的述懐が、失笑から知的哄笑までさまざまなトーンの笑いを読者から引き出すことに。さすが曲者ベイカーと唸らされる1作になっています。
豊﨑由美(書評家)
テレビブロス
2019年2月号
原書情報
U and I
: A True Story
Nicholson Baker
1991, Random House
ABOUT U AND I
Baker muses on the creative process via his obsession with John Updike.
ABOUT THE AUTHOR
Nicholson Baker is the author of ten novels and numerous works of nonfiction, including Baseless, The Anthologist, The Mezzanine, and Human Smoke. He has won the National Book Critics Circle Award, the Hermann Hesse Prize, and a Katherine Anne Porter Award from the American Academy of Arts and Letters. He lives in Maine with his wife, Margaret Brentano; both his children went to Maine public schools.